海外の投信・投資顧問会社との年金資産運用面での提携の動きもみられるが、今後さらなる提携強化が求められよう。
区分経理を活用して緊急に構築すべき具体的なALM戦略としては、次の三点が最も重要と考えられる。
目指すべき資産構成の全体構図の構築バブル崩壊後のポートフォリオの再構築が進んだとはいうものの、生命保険会社は未だに株式占率が高く、全体としてリスクが十分には分散されていないと思われる。
わが国の生命保険会社においてVARが計算されているかどうかは定かでないが、VARの手法によって一定の確率で安全とされるリスクを計測すればポートフォリオの改善はまだその余地が大きいと思われる。
今後の経済・金融見通しにもとづき、海外の金融証券市場をもにらんだあるべき資産構成の全体構図をモダンポートフォリオ理論(ショートフォール理論)などの援用によって構築することが先ず求められる。
一般資産区分、団体年金資産区分などの運用方針の確立次に、商品別に区分される一般資産区分、団体年金資産区分、一時払養老保険資産区分といった各資産区分ごとの運用方針(ALM)が確立されなければならない。
主に保障性商品に対応する一般資産区分は、長期的に予定利率を保証しつつ、同時に長期安定的なアセット・シェア配当の観点から総合収益でできるだけ高利回りを狙うという運用が求められる。
したがって、基本的にはバランス型の運用、すなわち貸付や債券に加え、株式や不動産等のキャピタル・ゲイン指向の資産もミックスした運用が基本となる。
ただ、保有契約の高予定利率を確保するためのハイリターン狙いは現在の運用環境の下ではリスクが大きすぎるので、フロア(最低限)の保証利率をたとえば現行の2.75%あるいはそれ以下に設定することも必要かもしれない(利差損は当面、死差益や費差益で相殺することとし、経理を明確にして全社区分との取引を行うことが考えられよう)。
団体年金(企業年金)は、既存の責任準備金へ付加する利率も含めて保証利率が既に2.5%に引き下げられているので、長期安定配当が可能になるようなバランス型運用が望まれる。
ただ、企業の金利選好が高いため金利反転時等には解約が増加するリスクがあるので、アメリカ生保の経験に照らしても流動性に配慮することが求められる。
さらに、一時払い商品のような貯蓄的商品には、デュレーション・マッチングなどのALMを重視し、ポートフォリオも貸付、債券を中心にすべきものと考えられる。
最後に全社区分には、これらの資産区分における運用が他金融機関との競争力を維持しうるよう、クッションとしての役割を果たすこと(たとえば、資産区分との機動的な貸借関係の設定など)も求められよう。
また、近未来には、全社区分を基礎としてROE管理を目指すことが考えられる。
キャッシュ・フロー型ALMの構築経済審議会が指摘するように、21世紀初めの金融業務は(支払い手段の受入れ・運用と保険引受けを除き)資産管理・運用サービスに収赦していこう。
すでにアメリカの生命保険会社では、確定拠出型年金向けのGICやユニバーサル保険などの貯蓄的な色彩の強い商品のウェイトを高め、資産管理・運用サービス業者としての運用体制を築きつつある。
たとえば、GICの有する解約リスク(流動性リスク)、運用債券の事前償還リスク、デフォルトリスクなどのリスクを管理するために、デュレーション・マッチング、デリパティブによるへッジからさらにはキャッシュ・フロー型のALMを採用している。
アメリカにおけるキャッシュ・フロー型ALMを図示したものであるが、決定論的あるいは確率論的な金利シナリオを想定し、解約や債券の事前償還などの現金流出入(キャッシュ・フロー)分析によって資産側の管理と同時に負債側の管理(商品設計・価格設定・版売戦略)を行おうとしていることが理解できよう。
わが国の生命保険会社においても、キャッシュ・フロー型のALMの構築が急がれよう。
先に述べたように、生命保険業に対する信頼回復の鍵として経営内容と商品の透明性の確保が重要である。
経営内容と商品情報の開示は、金融制度改革によって消費者の自己責任を問う前提でもある。
もっとも、現実には生命保険契約者の多くは、個々の生命保険会社の経営内容を正しく理解し選別することができず、また理解できたとしても健康状態いかんによっては預金のように自由に解約、他社移転を行うことは容易ではない。
また、契約の募集時に商品内容が他社商品との比較可能な形で開示されたとしても、それを理解することは困難である。
その意味で、生命保険会社の経営状態を監視し、価格を含む契約内容の公正・衡平に果たす政府の役割が、銀行などに対し重要である。
ただ、そのことから、保険の消費者は無知であるのでパターナリズム(政府による後見的保護)が不可避であり、情報開示は意義が小さいとの主張があるとすれば、それは保険規制のグローバル・スタンダードに合致しないことになる(EUでは、生命保険の約款と料率についての行政認可は不要である。
アメリカでも生命保険の料率は自由であり、約款に関しても基本的には保険契約法に合致しているかどうかのチェックしかない。
その代わり、英・米では、保険監督庁に提出された詳細な財務報告書が原則として一般に開示されており、アメリカでは保険会社の支払能力に関する格付けが普及している。
さらに、英・米では募集時の商品比較情報に関する厳格な開示規制がある)。
のみならず、もし本当にそうであるなら、保険はそもそも私的保険としては適さない、ということになりかねない。
(行政による最低限の品質保証が必要としても)消費者が自らの判断で選択可能でない商品・サービスが市場原理のもとで販売されることはありえないからである。
わが国の保険消費者のみが能力不足であり、賢くなるまで競争制限的な規制もやむをえないとの見解には賛成できない。
有価証券投資についても、一般大衆投資家が有価証券報告書を正しく理解し判断することは困難であるが、アナリストや格付け機関などが間に入ってわかりやすく解説することができる。
生命保険会社の経営内容についても同様に考えることができる。
というより、それが可能な情報開示がなされなければならない。
新保険業法は、銀行法にならって公衆縦覧制度を導入したが、開示内容が法定されてないこともあってそれだけでは十分ではない。
今後、具体的な開示項目の法定や違反に対する罰則強化が必要と考えられるが、生命保険会社としては従来から自主的に行われてきた情報開示(「決算報告書ヘ「・・・生命の現状」など)を一層進め、経営の透明性を高めることが求められる。
すでに、一部の生命保険会社は、他の金融機関並みに市場性ある有価証券、デリパティブ(先物、オプション、店頭取引のスワップ・オプション別)の時価情報、不良債権(延滞、金利減免、経営支援先別)などの開示を行ってきたが、生命保険会社、契約者それぞれの自己責任を問う前提として、全生命保険会社が、時価が必ずしも明確ではない海外の投資信託なども含めてさらに開示を進め、経営の透明性を高める努力をしなければならない。
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